2025年8月2日放送のNHK「探検ファクトリー」で、福岡県みやま市にある「筒井時正玩具花火製造所」の線香花火が特集されます。
番組では、お笑いコンビの中川家と吉本新喜劇のすっちーが、日本でも数少ない国産線香花火工場の魅力を探ります。
江戸時代から続く伝統と科学が融合した線香花火の不思議、そして職人の手仕事が生み出す美しさに迫る内容です。
この記事では、番組で紹介される筒井時正玩具花火製造所の魅力や、線香花火の仕組み、そして誰でも簡単にできる長持ちのコツまで、詳しく解説していきます。
筒井時正玩具花火製造所とは
番組の舞台となる「筒井時正玩具花火製造所」は、1929年に福岡県で創業した、国内でも数少ない国産線香花火の製造所です。
現在は三代目の筒井良太さんと今日子さん夫妻が、その伝統と技術を受け継いでいます。
この製造所の大きな特徴は、原料へのこだわりにあります。
火薬の原料となる松煙(しょうえん)は宮崎産、花火を包む和紙は八女産の手すき和紙を使用するなど、国産の自然素材だけで作られているのです。
さらに、東日本で主流の「紙巻きタイプ(長手牡丹)」と、西日本伝統の「わら巻きタイプ(スボ手牡丹)」の両方を製造しているのは、国内でここだけです。
特にスボ手牡丹は、貴重な伝統花火としてその価値が高まっています。
線香花火はどうやってできるの?
一本の線香花火に使われる火薬は、わずか0.08gほどです。
この少量の火薬を、職人が一枚一枚手作業で和紙に包み、丁寧にねじり上げて作られます。
火薬の微妙な配合や、和紙の巻き具合が火花の出方を大きく左右するため、すべての工程が熟練の技を要する手仕事です。
工場内では電気を極力使わず、自然光の下で作業を行うなど、昔ながらの製法が今も大切に守られています。
点火すると、まず先端に丸い「火玉」ができます。
この火玉の温度は約850℃に達し、そこから飛び出す液滴はさらに高温の1100℃近くになります。
この液滴が連続して分裂することで、私たちが見ている松葉のような美しい火花が生まれるのです。
火花が変化する理由とは?
線香花火の火花が美しく枝分かれするのには、科学的な理由があります。
火薬が燃えてできた火玉の表面では、内部から微細な気泡が発生して破裂します。
この破裂の勢いで、燃えている火薬の粒(液滴)が外に飛び出します。
飛び出した液滴は、高温によってさらに破裂し、より小さな液滴へと分裂します。
この分裂が最大で8回ほど繰り返されるため、見た目には火花が次々と枝分かれしていくように見えるのです。
また、線香花火の色の変化は、物質が燃える際の「炎色反応」ではなく、「黒体輻射」という現象によるものです。
これは物体の温度によって光の色が変わる現象で、温度が高い部分は白く、低い部分は赤く見えるため、火花に色のグラデーションが生まれます。
長持ちさせるためのコツ
繊細な線香花火を少しでも長く楽しむためには、いくつかのコツがあります。
まず、火をつける前に、火薬部分の根元にある“くびれ”を指で軽くねじっておくと、火玉が安定しやすくなります。
次に、火をつける際は、ライターの炎を直接当てるのではなく、炎の先端で優しく火をつけると、燃焼がゆっくりと始まり、火玉が落ちにくくなります。
そして最も重要なのが持ち方です。
花火を真下に垂らすのではなく、斜め45度の角度に保つと、火玉が紙のこよりに乗りやすくなり、持続時間が長くなります。
これらの工夫を組み合わせることで、通常よりも10秒以上も長く火花を楽しめるとの報告もあります。
工場での体験と地域とのつながり
筒井時正玩具花火製造所では、ただ製造・販売するだけでなく、線香花火の文化を伝える活動も行っています。
その一つが、線香花火作りのワークショップです。
ここでは、自分で染めた和紙を使って火薬を巻き、世界に一つだけのオリジナル線香花火を作ることができます。
5歳の子どもから参加可能で、完成した花火を暗い部屋で灯して鑑賞できる、貴重な体験となっています。
さらに、花火づくりにとどまらず、原料の確保や地域活性化にも積極的に取り組んでいます。
地元にパン屋や民泊施設を開くなど、まちづくりにも貢献している点も、この製造所の大きな魅力です。
線香花火をいちばんきれいに楽しむための時間とコツ
線香花火の繊細な火花の動きと色の変化を最大限に引き出すには、「時間帯」「環境」「持ち方」の3つの要素が非常に大切です。
少しの工夫で、いつもより長く、そしてもっと美しく火花を堪能できます。
夜の暗さと風の静けさが重要
線香花火が最も美しく見えるのは、周囲が完全に暗くなってからです。
特に夜の8時以降は、街の明かりが減り、火花の微細な輝きまでくっきりと見えます。
まだあたりが明るい時間帯だと、火玉の細かい分裂や色の変化がぼやけてしまうのです。
もう一つの重要な要素は「風」です。
線香花火の火玉は非常に小さく軽いため、わずかな風でも形が崩れたり、すぐに落ちてしまいます。
庭の壁際や建物の陰など、風が直接当たらない場所を選ぶことで、火花が静かに広がる様子をじっくりと観察できます。
背景を暗くすると火花が映える
楽しむ際の背景にも気を配ると、火花の美しさが一層際立ちます。
白い服や明るい壁などを背景にすると、光が拡散してしまい火花が見えにくくなります。
黒や紺色のTシャツを着たり、暗い植え込みの前で楽しんだりするなど、暗い色を背景にするのが理想的です。
スマートフォンで撮影する場合は、ナイトモードや明るさ調整機能を使うと、火花の幻想的な輝きをよりリアルに残せます。
撮影する角度は、正面からよりも少し斜め下から狙うと、火花の流れが立体的になり、美しい写真が撮れます。
楽しむときのポイントまとめ
ポイント | おすすめ条件 |
---|---|
時間帯 | 夜20時以降の完全な暗がり |
場所 | 風の入らない壁ぎわや庭の一角 |
背景 | 黒や紺などの暗い背景・服装 |
持ち方 | 斜め45度にして火玉が安定しやすく |
撮影 | ナイトモード使用・固定撮影でブレ防止 |
まとめ
「探検ファクトリー」で紹介された「筒井時正玩具花火製造所」の線香花火についてまとめました!
国産の自然素材にこだわり、職人の手仕事によって一本一本丁寧に作られる線香花火は、まさに日本の伝統工芸品です。
火花が美しく変化する裏には、温度によって光の色が変わる「黒体輻射」といった科学的な現象が隠されています。
記事で紹介した「長持ちさせるコツ」や「きれいに楽しむコツ」を少し実践するだけで、その繊細な美しさをより深く味わうことができます。
今年の夏は、暗くて静かな場所で、ゆっくりと消えゆく火花の一瞬のきらめきを堪能してみてはいかがでしょうか。
息をひそめて見守る豊かな時間は、きっと特別な思い出になるはずです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。