2025年8月4日放送の「クローズアップ現代」で、被爆80年という節目に「被爆者なき時代」の記憶の継承について特集されました。
被爆者の高齢化と減少が進む中、その声と想いをどう未来へつないでいくのか。
広島からの中継を交え、若い世代が挑む新しい継承の形が紹介されます。
この記事では、番組で取り上げられた記憶の継承に関する様々な取り組みを詳しく解説します。
被爆者の減少と記憶の危機
広島・長崎に原爆が投下されてから80年、被爆体験を直接語れる方は年々減り続けています。
2025年3月末の時点で「被爆者健康手帳」を持つ方の数は全国で約9万9千人となり、ついに10万人を下回りました。
これは40年前と比較すると4分の1ほどの数であり、平均年齢は86歳を超えています。
この高齢化の波は、平和活動にも大きな影響を及ぼしています。
長年、自身の体験を語り継いできた語り部の方々も、体力の問題から講話や証言活動を続けることが難しくなっています。
特に広島や長崎では、地域の平和団体で後継者不足が深刻化し、学校などからの講話の依頼に応えられないケースも増加しているのが現状です。
日本被団協のいま―ノーベル平和賞の光と影
1956年に結成された日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)は、全国の被爆者の声を束ね、核兵器廃絶を訴え続けてきた重要な組織です。
その長年の功績が認められ、2024年にはノーベル平和賞を受賞し、活動は国際的にも高く評価されました。
しかし、その栄誉の裏側で、組織は存続の危機に直面しています。
会員の高齢化と若い担い手の不足は深刻で、全国組織の3割以上が「2025年までの活動継続は難しい」と回答する事態となっています。
実際に、活動の縮小や解散に追い込まれる地域組織も増えており、被爆者の声を未来へつなぐための組織的な基盤が揺らいでいます。
代表者たちは、今こそ次の世代がその声を受け継ぐ時だと強く呼びかけています。
若い世代が挑む“新しい継承”の形
被爆者から直接話を聞く機会が失われつつある現代において、記憶を未来へ伝える方法は新しい形へと進化しています。
若い世代が中心となり、テクノロジーや独自のアイデアを駆使した様々な試みが始まっています。
小学生による英語ガイド
広島では、地元の小学6年生が平和記念公園を訪れる外国人観光客に対し、自らの言葉で英語ガイドを行う取り組みが続けられています。
子どもたちが自分たちの世代の言葉で戦争の恐ろしさや平和の尊さを直接伝えることで、国籍や世代を超えて深く心に響くメッセージとなっています。
VR・AIによる体験再現
記憶の継承に最新技術を活用する動きも活発です。
NHKや広島市は、貴重な被爆体験の記録をVR(仮想現実)やAI(人工知能)を用いてデジタルデータとして再現・保存しています。
これにより、被爆者本人の声や映像に基づいた没入型の体験が可能となり、当時の状況をよりリアルに「感じる」ことで、記憶を風化させないための新しい道を開いています。
高校生・大学生の創作活動
若い世代の自由な発想が、新しい形の継承を生み出しています。
広島の高校生たちは、被爆者の証言を一枚の絵画として描き起こす活動を継続しており、創作を通じて体験を“自分ごと”として捉え直しています。
また、東京大学の学生が人気ゲーム「マインクラフト」で原爆投下前の広島の街並みを再現するプロジェクトも行われています。
ゲームという親しみやすいメディアを通して、楽しみながら平和について考える新しい教育の形を提案しています。
国際的な証言活動
記憶の継承は、国境を越えて広がっています。
「ユース非核特使」として選ばれた日本の若者たちが、フランスやイギリスといった海外へ渡り、現地の若者と交流しながら証言活動を行っています。
被爆体験を直接知らない世代が、自らの言葉で記憶を発信し、世界とつながることで平和への共通理解を育んでいます。
番組が伝えるものとは
今回の「クローズアップ現代」では、キャスターの桑子真帆さんと慶應大学の小倉康嗣教授が、広島からの生中継を通じて、被爆者の現状と、記憶を受け継ごうとする若い世代の力強い活動を伝えます。
この放送は、単に過去の出来事を振り返るだけでなく、被爆80年という節目に、これからの未来を生きる私たちが平和のために何ができるのか、何をすべきなのかを問いかけます。
番組を通じて、一人ひとりが記憶の未来について見つめ直す重要なきっかけとなる内容です。
まとめ
「クローズアップ現代」で特集された、被爆80年を迎える「被爆者なき時代」の記憶の継承についてまとめました。
被爆者の方々の高齢化により、体験を直接聞く機会は年々失われています。
しかし、その貴重な記憶を風化させまいと、小学生の英語ガイド、VRやAIによる体験の再現、高校生や大学生による創作活動、そして海外での証言活動など、若い世代による多様な取り組みが生まれています。
これらの新しい継承の形は、私たちが未来に向けて平和をどう築いていくべきかを考える上で、大きな希望を与えてくれます。
最後まで読んで頂きありがとうございました。