2025年7月15日放送のEテレ『心おどる あの人の台所』で、世界を旅する料理家・口尾麻美さんの、旅と暮らしが一体となったキッチンについて紹介されました!
3か月に一度は海外へ旅立つという口尾さん。
その台所は、単に料理を作る場所ではなく、彼女の人生観や旅の記憶が詰まった、まさに世界の市場(バザール)のような空間です。
世界を旅する料理家・口尾麻美さんの“バザールキッチン”
世界中を旅して出会ったものであふれる口尾麻美さんのキッチンは、「バザールキッチン」と呼ぶにふさわしい、にぎやかで心おどる空間です。
ここでは、キッチンがどのようにして生まれ、日々の暮らしに息づいているのか、その魅力の源泉を紐解きます。
旅のエッセンスがぎゅっと詰まったバザールのような台所
口尾さんのキッチンの最大の特徴は、天井、壁、棚のすべてが旅の思い出の品で埋め尽くされている点です。
モロッコの色鮮やかなタジン鍋、トルコの銅製トレイ、台湾の屋台で見つけたレンゲ、リトアニアの木製スプーンなど、訪れた国の文化が息づくアイテムが並びます。
国も素材もデザインも多種多様な道具たちが、一見すると雑多に見えながらも不思議な統一感を生み出しているのが魅力です。
これは「色や柄が主張し合うことで、逆にお互いを引き立て合い調和する」という口尾さんならではの美学に基づきます。
旅先の市場の空気をそのまま持ち帰ったようなキッチンに立つたび、旅のワクワク感がよみがえり、次の旅へのインスピレーションが掻き立てられるのです。
旅の買い物ルール
世界中から素敵な道具を持ち帰る口尾さんには、独自の買い物ルールがあります。
まず、スーツケースの半分は必ず器などを入れるための「割れ物ゾーン」として確保します。
そして、道具を選ぶ基準は「自分が毎日使えるか」どうかという、ごくシンプルなものです。
単なる飾りではなく、日々の生活に溶け込むものだけを選び抜きます。
さらに、現地で学んだ料理と道具をセットで持ち帰ることも重要なルールです。
これにより、道具を見るだけで現地の味や調理法を鮮明に思い出すことができ、レシピが記憶に深く刻まれます。
暮らしに寄り添う道具の工夫とセンス
集められた多種多様な旅の道具は、口尾さんならではの工夫とセンスによって、使いやすく美しいキッチンを形作っています。
そこには、日々の暮らしを豊かにするためのヒントが隠されています。
見せる・吊るす・積む――三段活用収納術
口尾さんのキッチン収納の極意は、「見せる」「吊るす」「積む」の三段活用にあります。
扉付きの棚をほとんど使わず、オープンに収納することで、必要なものが一目で見つかり、すぐに手に取れるという実用的なメリットが生まれます。
器は種類や高さ別に美しく積み重ね、鍋やフライパンは梁から吊るして空間を有効活用。
色とりどりのスパイス瓶はカウンター上に一直線に並べることで、それ自体がインテリアの一部になります。
見た目の雑多さを整えるコツは、素材や色をある程度「ゾーニング」することです。
例えば、木製、金属製、ガラス製といった素材ごとにかためて配置します。
さらに、彩度の高い器をキッチンの中心に置くことで自然と視線が集まり、空間全体がまとまった印象になるのです。
アパレル経験が活きるディスプレイ感覚
料理家になる前はアパレル業界で勤務していた経験が、現在のキッチンディスプレイに活かされています。
「服をコーディネートする感覚で道具も組み合わせる」と語る口尾さん。
例えば、北欧のシンプルな白いお皿に、ジョージアの揚げ餃子「チェブレキ」を盛り付け、それをエジプトの真鍮製トレイに載せる。
このように、異なる文化を持つアイテムを自由に重ね合わせることで、一皿の中に壮大な旅の物語が凝縮され、食卓がより一層豊かなものになります。
使うたびに物語を思い出す“語る道具”
口尾さんのキッチンにある道具は、単なる調理器具ではありません。
一つひとつに旅先での出会いや思い出が刻まれた「語る道具」です。
南フランスの蚤の市で手に入れたオリーブのスプーンには、売り手だったおばあさんとの心温まるやり取りの記憶が宿っています。
料理をかき混ぜるたびにその情景が心に浮かび、食卓での会話のきっかけにもなります。
「物語がある道具は、毎日を少し楽しくする潤滑油」という口尾さんの言葉通り、キッチンは思い出を語り合い、自然と会話が弾むコミュニケーションの場となっているのです。
家族とともに過ごすかけがえのない時間
旅と料理、そして道具への愛情は、家族との時間にも深く結びついています。
キッチンは夫婦の仕事場であり、暮らしの中心となる大切な場所です。
夫婦で営むレストランと自宅キッチンの一体感
口尾さんは、夫の幸光さんと共に東京・学芸大学でレストラン「HÅN」を営んでいます。
この店では、世界を旅して得たインスピレーションから生まれる料理と、ナチュラルワインを提供しています。
自宅のキッチンは、レストランの営業前後に夫婦で新しいレシピを試作するための「試作スタジオ」としてフル稼働します。
幸光さんは食材選びと試食を担当し、互いのアイデアを即座に形にしていくスピード感は、夫婦ならではの阿吽の呼吸から生まれるものです。
子ども代わりの味見役?!
現在は夫婦二人で暮らす口尾さんですが、「道具や器が子どものような存在で、毎日話しかけている感覚」だと語ります。
キッチンにずらりと並んだ愛用の道具たちは、まるで家族の一員です。
新作のスープを鍋で煮込みながら、その鍋を手に入れた旅先の思い出を語る時間は、料理にとって最高の「隠し味」になります。
道具たちとの対話が、日々の料理をさらに味わい深いものにしているのです。
食卓は旅の延長線
口尾家の食卓は、まさに旅の延長線上にあります。
ある日の夜には、トルコ風のスパイスごはんの隣に、リトアニアの鮮やかなビーツスープが並びます。
テーブルを囲むだけで、国境を越えたミニトリップが始まります。
美味しい料理を味わいながら、自然と「次はどこへ行こうか」という話題になり、計画帳が開かれる。
キッチンから始まる旅の物語は、家族の絆を深め、未来の楽しみへとつながっていくのです。
まとめ
Eテレ『心おどる あの人の台所』で紹介された、料理家・口尾麻美さんのキッチンについてまとめました。
世界中の旅の思い出が詰まった「バザールキッチン」は、単に美しいだけでなく、「見せる・吊るす・積む」といった実用的な収納術や、モノとの向き合い方など、暮らしを豊かにするヒントにあふれていました。
旅と料理、そして家族との時間を大切にするライフスタイルは、日々の生活を楽しむための素晴らしいお手本です。