2025年7月13日放送のEテレ「チョイス@病気になったとき」で、多くの人が悩む手の痛みやしびれについて特集されました!
番組では、「ばね指」「ドケルバン病」「母指CM関節症」「手根管症候群」という4つの代表的な手の病気に焦点を当て、その原因からセルフチェック、最新の治療法まで、JR東京総合病院の三浦俊樹先生が詳しく解説しました。
指が痛くて動かない?「ばね指」と「ドケルバン病」
指の曲げ伸ばしや親指の付け根に痛みを感じる場合、それは「ばね指」や「ドケルバン病」かもしれません。
どちらも腱鞘炎の一種ですが、症状の出る場所や特徴が異なります。
ばね指とは?原因と治療の選び方
ばね指は、指を曲げ伸ばしする際に「カクン」とバネのように引っかかる症状が特徴の病気です。
この症状は、指の腱が通るトンネル状の組織「腱鞘(けんしょう)」が炎症を起こし、腱の滑らかな動きが妨げられることで発生します。
特に40代から60代の女性や、育児で手を酷使する人、更年期、糖尿病のある人に見られやすい傾向があります。
治療は症状の段階に応じて進められます。
まず基本となるのは、手をできるだけ使わずに休ませる「安静」です。
同時に、指を固定する装具や、痛みを和らげる塗り薬・内服薬を使用します。
それでも症状が続く場合は、炎症を直接抑えるために腱鞘内へステロイド注射を行います。
この注射治療により、約70%の人が症状の改善を実感します。
しかし、注射をしても再発を繰り返したり、指が曲がったまま動かなくなったりした重症例では、日帰りでも可能な「腱鞘切開手術」が選択肢となります。
この手術は局所麻酔で短時間で完了し、傷も小さく回復が早いのが特徴です。
ドケルバン病とは?特徴と治療の流れ
ドケルバン病は、親指側の手首に強い痛みが生じる腱鞘炎です。
親指を広げたり、物をつかんでひねったりする動作で痛みが悪化します。
ビンのフタを開ける、ペットボトルをひねる、赤ちゃんを抱っこするといった日常的な動作がきっかけになることも多く、こちらも女性に多く発症します。
治療の第一歩は、手首の使いすぎを避けて安静にすることです。
その上で、親指と手首を固定する装具や湿布、痛み止めの薬で症状の緩和を図ります。
これらの保存療法で改善が見られない場合は、腱鞘の中にステロイド注射を行うことで炎症を抑えます。
この注射は非常に効果的で、多くのケースで症状が良くなります。
ただし、何度も痛みがぶり返す場合や、仕事や家事に大きな支障が出るときには、腱鞘の一部を切開する短時間の手術も選択肢となります。
この手術は入院が不要なことが多く、回復も早いため注目されています。
親指の付け根が痛い「母指CM関節症」
物をつかむときやドアノブをひねるときなど、親指の付け根にズキッとした痛みを感じるなら、「母指CM関節症」の可能性があります。
これは加齢などに伴い、関節の軟骨がすり減ることで起こる変形性関節症です。
母指CM関節症とは?どんな病気なのか
母指CM関節症は、親指の付け根にある「CM関節」の軟骨が摩耗することで、痛みや変形を引き起こす病気です。
親指のCM関節は、物をつかむ、つまむ、ひねるといった複雑な動きを可能にする重要な部分であり、日常的に大きな負担がかかっています。
この長年の負担によって軟骨がすり減り、関節が不安定になって炎症や痛みを引き起こします。
初期症状は軽い違和感や痛みから始まりますが、進行すると痛みが強くなり、親指に力が入らなくなります。
さらに悪化すると、関節が亜脱臼して親指が外側に反る「白鳥の首変形」に至ることもあります。
初期治療の内容と効果
母指CM関節症の初期治療は、関節を休ませて炎症を抑える保存療法が中心となります。
具体的な治療法としては、まず親指と手首を固定する装具(スプリント)を装着し、関節への負担を物理的に減らして痛みを和らげます。
並行して、湿布や痛み止めの内服薬で炎症をコントロールします。
痛みが強い場合には、関節内に直接ステロイドを注射する方法も有効です。
この注射は外来で受けることができ、1回の処置で数ヶ月間痛みが軽減する効果が期待できます。
さらに、関節の安定性を高めるために、親指周囲の筋肉(第1背側骨間筋や母指対立筋)を鍛えるリハビリも行われます。
これらの保存療法だけで、数年にわたり症状が安定する人も少なくありません。
手術を考えるタイミングと内容
保存療法を続けても痛みが改善せず、日常生活に大きな支障が出る場合には手術が検討されます。
手術方法は患者の年齢、職業、手の使い方によって最適なものが選択されます。
主な手術には、痛みの原因である大菱形骨を取り除き、自身の腱を移植して関節を再建する「関節形成術」があります。
この方法は、術後も関節の動きが保たれやすいのが利点です。
一方、CM関節を金属などで完全に固定して動かなくすることで、痛みを確実に取り除く「関節固定術」もあります。
こちらは安定性が得られますが、関節の動きに制限が出ます。
いずれの手術法を選んだ場合でも、術後は3~4週間のギプス固定と、数ヶ月にわたるリハビリテーションが必要になります。
手がしびれる?「手根管症候群」とは
夜中や朝方に手のしびれで目が覚める、朝起きると手がこわばって動かしにくい。
そんな症状があれば「手根管症候群」が疑われます。
これは、手首にある神経の通り道が圧迫されることで起こる病気です。
手根管症候群とは?その原因と症状の特徴
手根管症候群は、手首の内側にある「手根管」というトンネルの中で正中神経が圧迫され、指にしびれや痛みを引き起こす病気です。
正中神経は、親指・人差し指・中指、そして薬指の親指側の半分の感覚と、親指の付け根の筋肉の動きを支配しています。
この神経が圧迫されることで、支配領域である指先にしびれや痛みが発生します。
特に、夜間や明け方に症状が強くなるのが大きな特徴です。
進行すると、日中もしびれを感じるようになり、ボタンがかけづらいなど細かい作業が困難になります。
さらに悪化すると、親指の付け根の筋肉(母指球筋)がやせてしまい、物をつかむ力が弱くなります。
症状に応じた治療法とその選び方
手根管症候群の治療は、症状の重さ(病期)に応じて段階的に選択されます。
軽度の段階では、夜間のしびれが主な症状です。
この場合、寝るときに手首をまっすぐに保つ「夜間装具」を装着することで神経への圧迫を減らし、症状の改善を図ります。
ビタミンB12などの内服薬も併用します。
中等度に進み、昼間にもしびれや痛みが出るようになると、装具や薬に加えて、手根管内にステロイドを注射して炎症や圧迫を抑える治療を行います。
注射は即効性があり、症状が劇的に改善することもあります。
重度と判断されるのは、親指の筋力低下や筋肉の萎縮が見られる場合です。
この段階では手術が推奨されます。
最も一般的なのは「手根管開放術」で、神経を圧迫している靱帯を切って神経の通り道を広げる手術です。
内視鏡を使った日帰り手術も可能で、傷が小さく社会復帰も早いという利点があります。
自分に合った治療を選ぶためのポイント
これまで見てきたように、手の痛みやしびれには様々な原因と治療法があります。
自分にとって最適な治療を選ぶためには、症状を正しく理解し、専門医と相談することが不可欠です。
セルフチェックと治療選びの考え方
症状に気づいたときに、自己判断で様子を見ずに、まずは早めに整形外科を受診することが最も重要です。
早期に正確な診断を受けることで、装具や注射といった体への負担が少ない保存療法で回復できる可能性が高まります。
治療法を選ぶ際には、症状の重さだけでなく、ご自身の生活スタイルを医師に詳しく伝えることが大切です。
毎日家事や育児で手を頻繁に使う人、長時間パソコン作業をする人など、それぞれの環境に適した治療法が異なります。
注射の効果が不十分な場合でも、ライフスタイルに応じて内視鏡手術のような回復の早い手術を選ぶことができます。
番組から得られるヒントとは?
番組では、専門医による分かりやすい解説を通じて、自分の症状を正しく理解し、治療への第一歩を踏み出すための多くのヒントが提供されます。
キャスターの八嶋智人さんや大和田美帆さんと共に、実際に症状を体験した方の声を交えながら解説が進むため、専門的な内容も身近な問題として理解しやすくなっています。
難しい医学用語は使わず、平易な言葉で説明されるため、専門知識がなくても安心して情報を得ることが可能です。
手の不調は誰にでも起こりうる問題であり、「今の自分に合った対策は何か」を考えるきっかけになります。
まとめ
Eテレ「チョイス@病気になったとき」で紹介された、ばね指、ドケルバン病、母指CM関節症、手根管症候群についてまとめました。
手の痛みやしびれは、その原因によって治療法が大きく異なります。
どの病気も初期の段階であれば、安静や装具、注射といった負担の少ない治療で改善することが多いですが、放置すると手術が必要になることもあります。
最も大切なのは、症状に気づいたら「年のせい」「使いすぎ」と自己判断せず、速やかに整形外科を受診することです。
そして、ご自身の生活スタイルに合った治療法を専門医と相談しながら見つけていくことが、症状改善への一番の近道となります。