2025年7月18日に放送された「首都圏情報ネタドリ!」では、シニア世代の暮らしを支える最新のAI技術について特集されました。
高齢者を狙った特殊詐欺の防止、一人ひとりに合わせたリハビリの支援、そして認知症の早期発見に至るまで、AIが私たちの生活をどのように変え、どのような可能性を秘めているのか、その進化の現場から具体的な取り組みが紹介されています。
だまされやすさを見抜くAIが詐欺被害を未然に防ぐ
高齢者を標的とした特殊詐欺の被害が深刻化する中、犯罪心理学とAI技術を融合させた画期的な防御システムが開発されています。
これは、人の心理状態をリアルタイムで分析し、詐欺被害を未然に防ぐことを目指すものです。
犯罪心理学×AIの新たな挑戦
富士通、東洋大学、そして尼崎市が共同で開発したこのシステムは、人の「だまされやすさ」をAIが見抜くという、全く新しいアプローチを採用しています。
詐欺電話を模した疑似体験の中で、ミリ波センサーが非接触で心拍や呼吸、表情の変化といった生体データを計測します。
AIはこれらのデータをリアルタイムで解析し、平常時とは異なる「危険な状態」を検知する仕組みです。
これにより、本人が自覚する前に、詐欺に遭うリスクを客観的に評価することが可能になります。
実験で明らかになった効果
2023年に尼崎市で実施された実証実験では、このAIシステムが82%という非常に高い精度で「だまされかけている状態」を検出することに成功しました。
AIは、詐欺師が多用する「焦らせる」「安心させる」といった巧みな話法パターンを学習しており、それに対する個人の微細な心理的・身体的反応を捉えることができます。
将来的には、この技術を家庭用センサーと連携させ、異常を検知した際に自動で家族や地域の見守りネットワークに警告を発信するなど、より実践的な活用が期待されています。
一人ひとりに合ったリハビリを提案するAI
リハビリテーションの分野でも、AIの活用が大きな進歩をもたらしています。
個々の身体能力やその日のコンディションに合わせて、最適なトレーニングを提案することで、より安全で効果的なリハビリの実現を目指します。
体の状態をAIが見守る新しいリハビリ
AIは、利用者の歩行スピード、姿勢、筋力の動きといった様々なデータをセンサーで常時モニタリングします。
そして、収集したデータを基に、その人に最も適した運動メニューを自動で作成・提案します。
すでに一部の高齢者施設ではこのシステムの導入が始まっており、利用者が無理なく、かつ効果的にリハビリを続けられる環境づくりに貢献しています。
続けやすさを支えるサポート機能
リハビリを継続する上で最も重要な「モチベーションの維持」においても、AIは大きな役割を果たします。
このシステムは、運動効果の「見える化」機能を搭載しており、「昨日より歩幅が3cm広がりました」といった具体的な成果を利用者自身にフィードバックします。
日々の小さな進歩を実感できることが、次への意欲につながります。
さらに、リハビリデータは家族や医療スタッフとも共有できるため、関係者全員が利用者の状態を正確に把握し、より適切なサポートを提供することが可能です。
認知症の兆候をいち早くとらえるAI
認知症は、早期にその兆候を発見し、適切な対応を始めることが進行を緩やかにする鍵となります。
日常生活の中に溶け込み、自然な形で変化を見守るAI技術に、大きな期待が寄せられています。
日常会話から変化を発見
注目されているのは、日々の会話の内容や話し方の変化をAIが記録・分析し、認知機能の低下を示す微細なサインを捉える技術です。
「同じ言葉の繰り返しが増える」「話すスピードが著しく落ちる」といった、人間では見過ごしがちなサインをAIが客観的なデータとして検出します。
これにより、認知症の前段階とされる軽度認知障害(MCI)の段階で異常を知らせ、早期の医療機関への相談や生活習慣の見直しにつなげることができます。
自宅でのチェックも可能に
このAI技術の優れた点は、自宅で手軽に利用できることです。
スマートスピーカーや専用タブレットに向かって普段通りに会話するだけで、AIが記憶力や注意力の状態を測定してくれます。
利用者本人に検査を受けているという負担感を与えずに、継続的な健康チェックが可能となるため、今後の幅広い普及が期待される技術です。
医療導入に対する慎重な意見も
AI技術は非常に便利で多くの可能性を秘めていますが、特に人の命や健康に直接関わる医療分野への導入については、その利点だけでなく課題やリスクについても慎重に議論されています。
命に関わる場面だからこその不安
多くの医療専門家が抱いているのは、「AIの判断ミスが起きたら誰が責任を取るのか」「AIが提案する治療法は、本当にその患者一人ひとりに合った最善の選択なのか」といった懸念です。
AIは膨大なデータを基に最適な解を導き出しますが、その判断プロセスが不透明な場合もあり、100%の信頼を置くことへの不安は根強く残ります。
人の判断とAIの共存が必要
現在の主流な考え方は、AIをあくまで人間の専門家を補助する「サポートツール」として位置づけるものです。
特に、認知症や精神的な問題のように、患者の感情や生活背景への深い理解が求められる領域では、データだけでは測れない部分を人間が補う必要があります。
AIが提供する客観的な分析結果を参考にしつつ、最終的な診断や方針決定は医師や専門家が責任を持って行うという、人とAIが協調し共存する形が、今後の医療の姿として追求されています。
AI導入チェックリストで安心・安全にスタート
ご家庭でAI機器やサービスの導入を考える際、事前にいくつかのポイントを確認することで、不安を解消し、スムーズに活用を始めることができます。
家族と一緒に、以下のリストを一つひとつチェックしてみてください。
使う目的がはっきりしているか
まず、「なぜAIを使いたいのか」という目的を明確にすることが大切です。
「詐欺対策のため」「日々のリハビリに役立てたい」「物忘れが増えた気がするので状態をチェックしたい」など、目的が具体的であるほど、数あるサービスの中から自分に最適なものを選びやすくなります。
小さく試してみることができるか
いきなり多機能なシステムを導入するのではなく、まずは一つのシンプルな機能から試してみることをお勧めします。
例えば、詐欺電話の検知機能だけを使ってみる、あるいはAIが提案する簡単な運動メニューだけを取り入れてみるなど、スモールスタートで自分に合うかどうかを確認しながら、徐々に活用範囲を広げていくと、無理なく続けることができます。
操作や音声はわかりやすいか
実際に使うご本人が「分かりやすい」と感じられるかどうかが、最も重要なポイントです。
画面の文字が小さすぎないか、音声がはっきり聞き取れるか、専門用語や複雑なメニューが多くないかなど、実際に触れてみて、直感的に操作できるものを選びましょう。
家族や見守りと連携できるか
AIが何らかの異常を検知した際に、その情報が自動で家族や指定した連絡先に通知される機能の有無は、必ず確認しておきたい項目です。
特に一人暮らしの場合、この連携機能があるだけで、万が一の時の安心感が格段に高まります。
情報の扱いに不安はないか
カメラやマイクを通じて個人情報を収集するタイプのAIでは、プライバシーへの配慮が不可欠です。
「どのようなデータが記録されるのか」「データはどこに保存され、誰が閲覧する権限を持つのか」といった情報の取り扱いについて、明確な説明があり、納得できるサービスを選びましょう。
まとめ
シニアの生活を支えるAIの最前線についてまとめました!
特殊詐欺対策からリハビリ支援、認知症の兆候発見まで、AI技術が高齢者の安全で健康な暮らしを多角的にサポートする未来がすぐそこまで来ていることを実感します。
特に、センサーで非接触に心身の状態を把握したり、日常会話から変化を捉えたりする技術は、本人や家族の負担を大きく減らしてくれる画期的なものです。
もちろん、医療への導入やプライバシーなど慎重になるべき点もありますが、今回紹介されたチェックリストを参考に、目的を明確にしてスモールスタートを切れば、AIは心強いパートナーになってくれるでしょう。
最後まで読んで頂きありがとうございました。